2008-06-29
嫌儲について。そしてお金を貰わずに無償で奉仕することのプライドについて。
最近ニコニコ動画をきっかけにイベントを企画するとか商品を売るということに対してあちこちで議論が盛り上がっています。この件については、前から思っていたことがあるので、ちょっとこのあたりで思っていることをつらつらと書いてみました。
最初に私のスタンスを結論的に述べると「儲けたければ儲ければ良いよ。その作品や行動が気に入れば私もそれを買うし、そうで無ければ無視するから」という感じに集約されます。複製や盗用については、もしそれが本当で問題とするなら権利者本人がその部分を特定した上で所定の手続きでクレームなり訴訟なりをもって対応すれば良いはずで、第三者が文句を言える筋合いにはないと思っています。
そもそも実際にコミュニティベースの無償の素材を使って利益を得る行為は、厳密に言うとけっこうな数の人がやっている行動で、私個人も無料のインターネットから情報をえてそれを使って会社の仕事であるレポートや報告書を書きそれで報酬を貰っています*1。だから文句を言える立場には無いと思うのです。
ニコニコ動画に作品を上げてそれを後から売ることを非難するのならば、企業がやっているニコニコ動画に無料でアニメを公開して後からそのDVDを売るとか、バナー広告を出してオンラインゲームの参加者を増やしてそっちのフィーで儲けるというのはどうなんでしょうか。そもそもドワンゴはこの事業を慈善事業でやっているわけではなく収入を得るための事業としてやっているのですから、それを否定するのならニコニコ動画という場とは別の場を自分で作らないといけなくなるような気がします。
そう言えば今回の騒動で出てきた言葉の一つに「下積み」というキーワードがありました。これはある意味、反対論者の気持ちを上手く表しているなと思います。「下積みも無く」なんて表現が出てくる背景には、コミュニティに対しての貢献が少ないのにそこから利益だけを吸い取るのは許せないというような気持ちがあるのではないかと思っています。まあその気持ちは当然でしょう。
実際私もこのコミュニティに参加している一個人として、フリーライダー的なただ乗り行為を許せない気持ちを感じることがあります。そしてこのようなフリーライダー的な意識の参加者の割合が増えすぎると、コミュニティへ貢献する行為のほうがばからしく思えるようになり貢献する気がしなくなってコミュニティ全体が衰退するということも起こりえます。
だからフリーライダー的な金儲けしか考えない人や行為は、まったく尊敬されないしある程度の非難を浴びるのも当然でしょう。若干の非難はコミュニティの風土の維持の為にも適当なのかもしれません。まあ、そこまでで良いのではないでしょうか?気に入らないのならそれを買わなければよいし、無視すれば良い。それを必要以上に叩く権利は誰にもないし、そもそもそんな時間があったら楽しいコミュニケーションを続けたり新しい作品を作った方が生産的だと思うのです。
あと個人的には、お金を払って貰えるだけの才能がある人は、本人にその気があるのであればせっかくの機会なのだから報酬を得ても構わないし、それを次の活動の為の投資として廻していってもらえれば嬉しいし、そういうのをきっかけにプロになるというルートもあった方が良いと思っています。
実際こういう場から成り上がるジャパニーズサクセスストーリーがひとつやふたつはあったほうが硬直化された社会にならなくてすむし、最近話題になる若者の閉塞感の打破などにも効果的だと思います。*2
今の流れを見ていると、多分長い目で見ればそういう方向に動いていくのでしょう。ただこうした流れになったときに一点だけ危惧していることがあります。それは例によって「金を稼いだヤツが偉くてそうでない人はダメな人」という画一的な価値観でこのコミュニティが占有されてしまうことです。
さっき本人が儲けたいと思うのならと言う但し書きをつけましたが、こういうコミュニティには「お金を貰わないこと」「(負担分は)持ち出しの無償奉仕で参加していること」にコダワリを持っている人も少なからず存在するということも理解する必要があると思うのです。
このなぜお金を貰わないかとか無償で持ち出すかという理由は各人いろいろでしょうけど、例えば「趣味だからこそ自分が好きな作品を原価に拘らず究極的に品質を追求して作り上げる」っていうのもあるし、「もともと無償で得たものだから無償で還元したい」とはっきり言う人もいます。こういう人達の存在や気持ちを理解して尊重できる環境にもなって欲しいです。
サクセスストーリーができると、またマスゴミが「ニコニコ動画を使ってプロモーションをして何億円儲かった」だの、「ネットに作品を公開した学生が2年後には何千万もの報酬を得た」とかそういうたぐいの報道をばらまくようになると思うのです。
そして、そういうのを見たよく判っていない人が、お金を貰わずに無償で奉仕することにプライドを持っている人達に対して「いくら儲かったの?」「まだ儲けないの?」といった彼らに取って最大の侮辱言葉を投げかけるのをどうにか防げないものか。アマチュアという立場で楽しい作品を創ることに楽しみを見い出している人が「いづれはプロになるんでしょ」と声をかけられたり、コミュニティに奉仕することを生き甲斐にしている人に「ニコニコ動画って、ああ、あの素人でも金儲けできる場ね」なんて言われるのは嘆かわしい。そんな事を言われたらそういう人のモチベーションは多分恐ろしいまでに下がってしまうと思うのです。
繰り返しますが、儲けたい人は儲ければ良いと思います。せっかく巡ってきたチャンスなのですから、でも皆がそういう人ではないという事もきちんと周知して理解されていくことを願ってやみません。
(吉川 日出行)
コメントありがとうございます。このあたり各種様々な要素が絡み合っていて難しいところではありますが、議論を重ねていってだんだんとゴールに近づいていけば良いとは思っています。